菅野樹のよもやま

創作、妄想、日々のもろもろ

2016-10-02から1日間の記事一覧

すべてのものに幸いあれと願う

遠い山の中から出てきた青年は、灰色の空の下にいた。乾ききった風中には、昔に突き刺したような棒杭。真っ直ぐ西へ向かう道に、バスは走っているはずだ。足元に絡みつく冷たい風を、僅かな荷物が入った小さな背嚢で防ぐ。凍えた体を己の両手で抱き寄せて、…

男子厨房に入るべからず 白玉

山々が、黒い大きな生き物のように蹲って見える。今宵は仲秋のはずだが、まだ青灰色の空に月の姿は見えないでいる。風はもう夏の熱気を失い、開け放った車の窓からはざんざんと風が入り込み、伸びすぎた私の髪を散々にかき回す。浮かれた季節も仕事に追われ…