菅野樹のよもやま

創作、妄想、日々のもろもろ

2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

この素晴らしい世界 第七回 短編小説の集い参加作品

【第7回】短編小説の集いのお知らせと募集要項 - 短編小説の集い「のべらっくす」novelcluster.hatenablog.jp 「花闇」お読みいただき、ありがとうございました。 今回は、未来。 難しいお題でございますが。 この素晴らしい世界 波の音が激しくなると、冷…

くだきつね

茫々たる薄野原の真ん中で、萩の花枝を幾本か右手に持った狩衣姿の男がいる。 歳の頃は、四十ほど。空に昇りゆく煌々と冴えた月を眺めている。 はて、紅葉狩りにと出かけてみたが、どうやら迷い子になってしまったらしい。 従者の姿も、何もない。 けれども…

お江戸小噺 ゆうづつ

三味線の糸が切れ、さっくり小指が切れてしまった。お幸は泣きそうな顔をして、血が滲む小指を口に含む。 あぁ、いやだ。くさくさする。もう、何日も、人と話していない、ご飯も食べていないような気がする。買い置いていた酒だけが、減っていく。このお江戸…

お江戸小噺 雨宿り

下町の紫陽花がそろそろ花を開こうとしている。 江戸の町にも、梅雨前のどんよりとした雲が広がり始めていた。 繁華な町でも、雨が降れば泥まみれになってしまうのが、難儀な点だった。 「お前さんに頼んでおくと、間違いないねぇ」 日本橋の、薬種屋太田屋…

路地裏の公爵

色彩溢れる繁華な街を抜けると、小さな橋があり、それを渡れば灰色の古い町がある。とある古い店は、洋酒と洋モクしか売っていない奇妙な所で、店番は年中、白髪の長髪をバンダナで巻いたインディアンみたいな婆さん。そこに入るには、前に端整に座るジャー…